妄想トンカツ

いきなり意味不明なタイトルで途方に暮れられたことと思いますが、こちらも只今同じ心境です。いいかげんページの主旨が暗黒星雲の彼方にいっちゃってるのに、それでもなお書かずにいられない真冬の戦慄!まあ聞いて下さいな!

上野のアメ横界隈には、何軒か名店と呼ばれるトンカツ屋さんがありまして、要は世の中が素朴で貧乏だった時代の名残なんでしょうが、今にも倒壊しそうなボロ屋なのに、カツは最高にジューシー&フレッシュな「蓬莱屋」とか、筆者はちょっと懐があったかい時にそんなお店を巡るのを楽しみにしていたんですね。

さて、そんな上野トンカツ地帯のはずれに、何時行ってもいっつも閉まっているというナゾの店が一軒ありましてね、そこがもう凄いんですよ。蓬莱屋にも負けないボロボロの店先に、いきなり

「(再増補)地球環境保護と飢餓救済のために、とんかつ屋、天ぷら屋における公害と犯罪」

・・・というパンフと

「当店と他店のとんかつ食品分析比較」

・・・というプラカードが置いてましてね、自分のトンカツがいかに他店のものに比べて優れているかを「科学的に」切々と訴えてるんですよ。いわく

「最低限の科学的知見も市場原理も無視しているのはとんかつの世界くらい」

「他店で「とんかつ」と称しているものが異常なもの」

・・・などなど、寿司やソバはすでに科学的知見から商売をやっていたとは筆者もついぞ気付きませんでしたが、本当に凄いのはこれらの根本敬が喜びそうなイカレテキストでなく、実際この店のあるじが編み出した、恐るべき「科学的とんかつ」の方なんです!

先日たまたまこのお店が開いているのを目撃した筆者は、阿片窟にホウムズの姿を求めるワトソン博士の気分で潜入を試み、震える胸の動悸こらえてYes Love me・・じゃない念願の「科学とんかつ定食」をオーダーしたざます。

いきなり「当店のとんかつはお時間がかかります。お待ちいただけないお客様はお引きとり下さい」などと注文の多い料理店みたいな脅しの張り紙に威嚇を受け、いかにも「よくわからないけど無駄な所に信念入ってます」(配膳には一家言ありそうな気配ながら、店の隅は着替えやゴーマニズム宣言の単行本などでグチャグチャ・・・よくいる信念と実生活が乖離した筆者のようなタイプ)なオヤジが現れます。

ここでパンフに書かれているここのオヤジの主張をかいつまんでご説明いたしますと、一般に揚げ物というのは沸騰した油によってネタの水分をとばすことでカリッとした食感を楽しむこととなっているそうでして、しかしこうした料理法は、水分の多い魚介類の天ぷらならともかく、肉汁の旨味を味わう肉料理には向かない、ために自分は独自のメソッド(あまり料理で使われるのを聞く言葉じゃないけどそう書いてあるから仕方ない)で肉のジューシイさを失わないようにとんかつを揚げる秘策を編み出した・・・という、話だけ聞いていたら、なるほどまあごもっともな内容なんですが。そのために実際オヤジが、まるでオーケストラの指揮者のような、華麗かつ無意味な身ぶりで、ナニをしでかしているかと申しますと・・

小麦粉と卵を塗ったくった豚肉の塊を

低温の油でぶじゅぶじゅと20分煮る。

オヤジ、それはただの豚の油煮だ

結果、全身どっぺりと油を含みきったジューシイすぎる肉塊は、もはやベテルギウス人も作ったことのないような未知の料理となり果てて、肉汁は逃げなかったかもしれないけど、客は今からでも逃げ出したくなるような、大変健康に悪そうな一品。ご家庭に邪魔なご親族など居られましたらぜひ一服・・じゃない一席設けられるとよろしいのでは・・・という感じでございまして、なるほどめったに店が開かないのも納得。付近住民にリンチされて不思議な果実になるのは確実です。そんな逆境にもめげず未だに店を続けるオヤジの心意気(あるいはなにかの陰謀)やあっぱれですが、こげなバカ料理に2300円支払った筆者の心中いかばかりか。ああおそるべし妄想トンカツ・・といったところでお開きでございます。げええ

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